仕事の進め方に問題のある部下の指導をどうするか

係長が果たすべき職務の1つとして、部下を育成することがあります。育成は、部下の職務遂行上の問題に対して、対症療法的に関わることにとどまりません。係員一人ひとりの能力を見極め、短所をカバーするだけでなく、長所を伸ばすような指導が求められています。

 

「報・連・相」のできない部下

仕事の進め方は、報告、連絡、相談、いわゆる「報・連・相」が基本です。部下から適切なタイミングで報・連・相が行われれば、上司は的確な指示を出すことができます。特に基本中の基本と言われる「報告」では、たとえば業務の進捗やトラブルの発生を把握できれば、対外的な調整が不調に終わるなどの重大なミスを回避することができます。
部下の中には、この報・連・相を苦手とする者、あるいは不十分な者もいるでしょう。こうした部下に対し、その不作為を注意するだけでは、問題は解決しません。報・連・相について、日報の作成や係会の設定、スケジュール表の作成など具体的な作業を伴う決まりごとをつくり、指導することが有効です。新採職員など若手に対しては、年の近い先輩職員を教育係としてつける「メンター制度」で身につけさせることもありますが、職場の職員数の余裕にも気を配らなくてはなりません。
また、自分が報・連・相をさせない上司になっていないか、という自省も必要でしょう。常に忙しそうにしていたり、威圧的な態度になっていませんか? 部下は「こんなときに話しかけて大丈夫だろうか」「話しかけづらい」と思っているかもしれません。最近では、部下からの報・連・相を引き出す「できる上司」のスキルとして、「おひたし」(怒らない、否定しない、助ける、指示する)が大切とも言われるようになっています。

自分の仕事をやらない部下

自治体において、係は最小単位の組織であり、係は一丸となって業務に当たることが求められます。チームで取り組むことで、各人が個人の役割を果たし、また得意分野で力を発揮し合うことができれば、より大きな成果をあげることにつながるでしょう。しかし、たとえばこのチームのなかで、誰か一人が手を抜くようだとどうでしょうか。チーム内の仕事に偏りが生まれ、ほかのメンバーにしわ寄せが生じてしまいます。
そうした不均衡が生まれる場合には、それぞれのメンバーの役割と責任を明確にすることが重要です。そうすれば各人は自分がやらなくてはいけない仕事をはっきり目にすることになりますから、手を抜くことができなくなります。また、業務に手を抜く職員への個別の対応としては、公務員としての責任を果たすよう直接指導することが必要です。それでも状況が改善しないようなら、分限処分があり得る旨を警告したり、より上位の役職に相談することも考えます。
一番やってはいけないことは、手を抜く職員への指導をあきらめ、他の職員たちの頑張りに甘えて、ことを終いにしてしまうことです。これは、係のモラール(志気)を大きく損ね、ひいては係運営に悪影響を及ぼします。

事例行政判断の問題にすると…

部下を単に「注意する」だけでは、育成にはつながらないことは、お分かりいただけたと思います。以下のケースでは、B主事をどのように指導することが育成につながると考えますか?
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Aは、係長歴6年目を迎える中堅係長である。A係長の属する雇用促進課就労支援係は、就労を希望する失業中の住民に専門的な技能訓練を行い、新たな職探しを後押しする事業を行っている。係の仕事は相互に関係しており、訓練を実施する業者の選定、参加者の募集、受講後のフォローなど、年間を通じて一連の流れがある。
B主事は、就労支援係に配属されて3か月が過ぎるが、担当業務の進捗状況報告が遅れがちである。これまでも、A係長は、仕事を進めるうえでは、速やかな報告を行い、必要に応じて指示を受けるように何度か注意してきた。今回、職業訓練を行う業者選定にあたって必要な説明会が、B主事の遅れが原因で延期される自体が生じた。A係長は、B主事に対してどのような指導を行うべきか。

(1) 「報・連・相」の重要性を改めて説明したうえで、引き続きOJTを通じて、B主任の育成を目指していく。
(2) 教育係として部下のC主任を指名し、B主事の業務は原則としてC主任のチェックを受けながら遂行することとする。
(3) B主事の対応の遅れで係全体に迷惑がかかったことについて、他の職員がいない場所でしっかりと注意して、けじめをつける。
(4) 業務スケジュール表を作成させ、毎週月曜日に打合せを設定し、担当業務の進捗状況と1週間の予定を報告させる。
(5) 課長にこれまでの仕事ぶりと今回の失敗について報告し、B主事を異動させるように進言する。
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さて、どの選択肢が妥当だと思いますか? 正答とその解説は、下記<関連書籍>の「設問36」にございます。ぜひ確認してみてください

関連項目

【関連書籍】

事例で学べる行政判断 係長編