「言いなり」「頭越し」、困った課長への対応とは

係長には係長に期待される職責があるように、課長には課長として果たすべきことがあります。現にいる課長はそれを担うことができると組織に判断され、登用されているはずですが、一部でこんな「難」がある困った課長がいることも、現実ではないでしょうか。

上司の命令に従うのが義務だが… 「言いなり」課長

組織においては、上司の命令に従うことが大原則です。地方公務員法32条でも、「上司の職務上の命令に従う義務」を課しています。といって、例えば課長は、部長から与えられた命令をそのまま下位の職に伝えればよいかというと、そうではありません。課長には、自分が預かっている組織の状況を把握して、自分なりの判断として課長からの命令を発出することが求められます。係長も、これは同様です。
もし、直属の上司が、部長の命令をそのまま伝える「言いなり」課長だったら、係長であるあなたはどうしますか?  係長は、課長を適切に補佐して業務を円滑に進めなくてはなりません。「言いなり」の命令の内容が納得を得られないものであった場合、そうした命令が続けば、組織に不満が蓄積し、よい仕事ができないといった状況なることも想定されます。
課長にも、立場や自分の考え方があるので、まずは「相談する」というかたちで二人で話すのが妥当と言えるでしょう。命令の内容に納得しかねる場合や、さらに進んで組織に不満が出ているような場合は、部長への対応を考えてもらう必要があります。相談の中で係の現状を説明し、気づきを促して、課長としての役割を果たしてもらうようにします。課長を変えるのではなく、係員に我慢するよう説得するようなことは、言語道断です。

 

「命令一元化」はどうなった!? 「頭越し」課長

命令に関しては、組織原則の1つである「命令一元化の原則」も皆さんにとって身近でしょう。この原則によると、1人の部下に対して複数の上司から命令が出されてはならず、また、上司は、自分の部下を飛ばしてさらにその部下に命令を出してはなりません。
話は変わるようですが、あなたの係には、係の仕事をよく知り、また業務の関係者にも顔の広い「名主」のよう係員はいませんか? そうした係員はあなたにとって心強いのと同様に、課長にとっても心強い存在です。特にあなたが着任まもないようであれば、あるいは「頭越し」で指示してしまうこともあるほどに…。
こうした「頭越し」が発生すると、係長は係の動きを十分に把握できないことになり、また頭越しで指示される係員も、どの命令に従うのか混乱し、組織としての業務に支障を来すおそれがあります。そうした場合、課長に対しては、組織としての指示のラインは課長から係長に対するものであることを進言し、改めてもらう必要があるでしょう。業務の詳細等に不案内ならば、詳しい担当者の知恵を借りるなど、指示を受けるときの工夫も必要です。

事例行政判断の問題にすると…

課長を補佐することは係長に求められる大きな役割であり、上司への対応は、係長昇任試験でもよく問われるテーマです。先ほども上がった「頭越し」課長。以下のようなケースを、あなたはどのように考えますか?

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本年4月、Aは、県庁H課の調整係長として異動してきた。H課は、県内の市町村と調整しながら進める業務が多く、過去の様々な経緯を踏まえた判断が必要となる。A係長は、H課に勤務するのは初めてであるが、上司のB課長はH課の係長を2ポスト経験しており、H課の業務に詳しかった。また、A係長の部下のC主任は、H課に8年間勤務しており、業務に通暁するとともに市町村の関係者とも知り合いが多かった。B課長は、A係長の着任当初から、A係長を飛び越してC主任に指示を出すことが多く、このため、A係長は、調整係の動きを十分に把握できず、業務がやりにくくなっている。この場合、A係長の対応をして最も妥当なものは、次のうちどれか。

 

(1) B課長とC主任はともに業務に詳しいことから、当分の間は、C主任からB課長の指示を聞いて、必要に応じて自分も指示を加える。
(2) C主任に対して、B課長から直接に指示を受けていることを注意し、今後は、B課長からの指示を受けないように指示する。
(3) B課長に対して、C主任に対して直接指示するのではなく、C主任同席のもと自分に対して指示するよう依頼する。
(4) B課長に対して、自分が調整係の業務を把握すべきなので、全ての指示は自分に直接出すよう依頼する。
(5) H課の他の係長とともに、B課長に対して、各係に対する指示は必ず係長に対して行うよう依頼する。

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さて、どの選択肢が妥当だと思いますか? 正答とその解説は、下記<関連書籍>の「設問2」にございます。ぜひ確認してみてください!

関連項目

【関連書籍】

事例で学べる行政判断 係長編